8 ライバル出現!?

5/8
378人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
章は廊下を走り、図書室を目指した。 頭の中に「あれ、男だから」という台詞がぐるぐると回る。 まさかみのりが今日男と作業するなんて知らなかった。 そんなことなら初めからみのりの手伝いでも何でもして傍に居たのに。 まさか二人っきりじゃないだろうな。 ソイツに変な事されてないだろうな。 考えれば考えるほど章の顔は青くなった。 図書室が見え、章は一度深呼吸をした。 何かあった時に熱くなって手が出てしまうなんてことは、みのりの前では避けたい。 握りしめた拳を押さえるように反対の手で包みこんだ。 そしてゆっくり図書室のドアを開けた。 受付には誰もいない。 もともとこの図書室へは本当に本が好きな人しか立ち寄らない傾向がある。 参考書類は別な資料室に全部あるため、図書室がにぎわうことはほとんどない。 章はそっと足を進め棚の列を探すようにした。 3列目の奥。 本が出し入れされる音がする。 章が覗き込んだ時、みのりの後ろから背の高い袴姿が覆いかぶさるようにしているのが見えた。 E組の剣道部の坂本。 由香の言葉の中からしっかりと覚えていた名前が頭をよぎる。 「っ、おい!」 思った以上に大きな声が出た。 章がその袴姿の肩を掴みみのりから離すように引くと、奥からみのりが驚いた顔で振り返る。 「っ、貴様!何をする!!」 そう言ったのはもちろん袴の男…… ではなく、 「女子に簡単に触れるとは、コレだから最近の男はっ!」 背が高くショートカットにした、袴姿の“女”だった。 章の顔が引きつった。 「章くん……あ、ごめんね。もうすぐ終わるんだけど、」 「……みのり、」 「遅かったら、先に帰ってもいいよ?」
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!