1・桜

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桜の木に、緑が多く交じり始めた今日この頃。 ふと窓の外を見上げると、長く雲を引きながら、 一機の飛行機が飛んで行くのが見えた。 「亮輔、頑張ってるかなぁ」 頬杖をつき、今頃南半球のどこかの グラウンドで、汗を流しているだろう、 恋人のことを想う。 つき合って二年目になる、恋人の芳賀亮輔は、 同じ会社の実業団ラグビー部のスター選手。 この春、見事『勇敢なる桜の戦士』の一人に 選ばれ、ただ今ニュージーランドでの テストマッチ、いわゆる練習試合に 赴いている。 対する私、柏木奈緒は、矢島建設城北営業所に 所属する、ごく普通のOL。 こんな私を選んでくれた、大好きな彼を 支えられるよう、日々頑張っている。 「柏木さん、これで良いですか?」 ボンヤリと彼の事を考えていると、隣の机から、 数字の並んだA4の用紙が差し出された。 「あ、はい。じゃあチェックするね」 急いで窓の外から視線を外して紙を受け取り、 紙面に目を落とした。
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