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桜の木に、緑が多く交じり始めた今日この頃。
ふと窓の外を見上げると、長く雲を引きながら、
一機の飛行機が飛んで行くのが見えた。
「亮輔、頑張ってるかなぁ」
頬杖をつき、今頃南半球のどこかの
グラウンドで、汗を流しているだろう、
恋人のことを想う。
つき合って二年目になる、恋人の芳賀亮輔は、
同じ会社の実業団ラグビー部のスター選手。
この春、見事『勇敢なる桜の戦士』の一人に
選ばれ、ただ今ニュージーランドでの
テストマッチ、いわゆる練習試合に
赴いている。
対する私、柏木奈緒は、矢島建設城北営業所に
所属する、ごく普通のOL。
こんな私を選んでくれた、大好きな彼を
支えられるよう、日々頑張っている。
「柏木さん、これで良いですか?」
ボンヤリと彼の事を考えていると、隣の机から、
数字の並んだA4の用紙が差し出された。
「あ、はい。じゃあチェックするね」
急いで窓の外から視線を外して紙を受け取り、
紙面に目を落とした。
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