空想世界より紡ぐ詩

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最初に読んだ物語は 今はもう憶えていない 幼心に芽生えた感情も 見様見真似で書いたお話も 頁の中にも画面の中にも 心踊る世界は溢れていて 形無き空想の翼を煽る 虹色の風となったの ――ミルクショコラを飲むと思い出す記憶の中には数多の英雄やヒロイン達が居る 幼かった言葉は軈て 屁理屈だらけの思想を纏い 迷想迷宮 幾つも彷徨い さざめく波間に光を探し 焦がれる世界を鏡越しに視ては 問わず語りの述懐に溺れ 安易な思考の悪循環に 流されながらも見上げた三日月 ――真綿に包んだ純真が無邪気な羊に食べられてしまう前に糸車を回しましょう 揺らめく影に落ちた果実が 陽の腕に抱かれ芽吹きを迎える 鳥の囀り 鳴り響く鐘 如何なる時でも物語は始まる 装飾過多な螺旋の塔に 真新しい風が吹き抜けたら 甘い香りの紅茶を飲み干し 錆び付いた扉の鍵を開けよう 記憶に残る鮮やかな言葉が 鼓動のリズムも軽やかにする 最初の神話が紡がれた時より 物語に溢れたこの星で―― 空想世界の全てが私で 今も書き綴る幻想の森
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