第6話「パーティー結成は成り行きで」

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 どうやらあの魔獣はハムスターではなくモモンガだったらしい。そしてその目的は人を襲うことではなく、人の所持品を奪うことのようだ。 「ワシの財布がっ」 「ああ、魔石がないっ」  見渡すと、町中はパニックに陥っていた。決して無数と言えるほど多い数ではないが、すばしっこく飛び回り、あっという間に体中を這い回り持ち物を頬袋に入れて奪い去っていくその小さな悪魔がいつ自分の元に来るかと、人々は身構え逃げ惑っていた。 「ピギッ」  どこからともなく滑空して俺に近づくモモンガに気付き、俺は反射的に右の邪龍剣を抜き、空中で一体を斬り伏せた。魔獣討伐時特有のキィンとガラス細工が割れたような音がいつもより特別小さく聞こえ、地面に誰の物か知れない小銭や指輪が落ちると共に、いつもの如く光の玉が邪龍剣の中に吸い込まれた。  やはりこいつは魔獣だ。しかし何故、魔獣が町の中に。俺が最初に辿り着いた山の中の村でさえ、村を取り囲むように魔獣避けの魔具が設置されていた。魔獣を倒すことで手に入り、俺達の収入源となっている魔石の主な用途はこの魔獣避けである。専用に魔術師が練り上げた魔石を電池のように定期的に交換して魔具にセットしておけば、特別強力な個体や大群で魔具を破壊されない限り、魔獣が町に入って来ることはできないらしい。そういう場合も常に予兆を感じ取れるよう衛兵が魔獣の住処を見張っているので、即座に近辺のハンターや衛兵による討伐隊が組まれ、対処する仕組みになっている。  こんな突拍子もない魔獣の襲撃は、この世界でもイレギュラーなはずだ。
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