シンミア。

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 一に軍務、二に軍務。  私の人生にそれ以上も以下もない。  恋愛など以っての外。  誰も私に関わるな。踏み込むな。  第二部隊小隊長ミア・フェザー。  誰よりも気高く、誰よりも頑なな心を持つ彼女は、誰が相手でも変わりはしない。 ◇◆◇◆◇ 「ミア小隊長! 今日、行きません?」 「……」  駆け寄ってきたのは、同じ第二部隊の兵士であるリゼ。  ジョッキを持ち上げ、ビールを煽る動きを見せる右手をミアに見せつけ、どうです?と聞き直してくる。  彼女は懲りない。  こうして何度尋ねて来ても、答えは決まっているのに。 「まだ仕事残ってるから、遠慮する」  ノー。幾度誘われても答えはこれなのに。 「そっかぁ、残念。また誘いますね!」 「悪いな。ありがとう」 「いえー! 仕事頑張って下さいー」  ぶんぶんと手を振り、走り去っていく彼女のはしゃぎようからすると、今日の飲みも男が混じっているものらしい。  何となく察しがついて、ミアは重い息を吐いた。 「……」  リゼと飲みに行くのが嫌な訳ではない。酒を飲むのも、嫌いではない。  けれど――女同士で行くと呼んでもいないのに男が寄ってくる。それが、何よりも嫌だった。  最初から男が混じっての飲みなど、以っての外だ。 「……私を、女扱いするな」 “女”として扱われる事が、苦痛でしかない。  その点、ミアの所属する隊の隊長はわかりやすい。愛しのサラ姫以外、女として見ないのだから。  ――だからこそ、惹かれるものがあるのだろうか。 .
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