第31章 正しい彼氏への甘え方、甘やかし方

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ピンポン! ピンポン、ピンポン! 「……」 次に目を覚ましたら、もう部屋は暗かった。 それと、スマホのアラームみたいに鳴り響くチャイムの音がする。 さっき、昼間に一度目を覚ました時はなんの音もしなくて、俺だけがここにいて、インフルで苦しんでてしんどいって思ってた。 そんな寂しい部屋を騒がしくするチャイム音。 「は、は……ぃ……」 熱のせいで声が震えてる。 起き上がるとやっぱ頭が割れそうに痛くて、その場に丸まりたくなる。 それでも玄関に向かうために足をベッドから下ろすと、膝も腰も肩も熱のせいで痛い。足の裏が変な感じがする。 「勇人!」 岳だ。 ただ、それだけで足に力が入った。 「は、は、ぃっ」 チャイムを鳴らしても反応がないことに玄関向こうで岳が焦ってる。 だから、心配させたくなくて、フラフラしつつも玄関の鍵を開けた。 「大丈夫か?」 部屋も寝てただけだから暖房入れてなくて寒いけど、でも、それよりももっと寒い外気と一緒に扉から岳が飛び込んできてくれた。 ちょっと、汗で湿った服だとそれが寒くて、自然と肩を竦めて背中が丸まる。 「もう病院行ったのか?」 その背中と肩に、岳の、あのモッコモコのダウンがかけられて、内側は岳の体温で暖まっていたから、頭痛くらい和らぐほど気持ちイイ。 すげぇ落ちつく。 「あの、岳、平気、ごめ、差し入れだけ」 移るといけないだろ。 保育士なんだから。 先生なんだから。 今、俺の近くには絶対に来ちゃいけない。 「バカ! 遠慮してんな。ほら、いいから、汗は? 着替えろ。お前の着替えは……えっと」 部屋に明かりがついて、一気に空気が動きだす。
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