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見ると、そこに座る男には翼があった。
漆塗りのように、艶やかで黒い翼。
綺麗だと、思った。
男は僕の姿に気付き、乾いた笑いを漏らす。
――君か。君は……いや、なんでもない。
男は僕のことを知っているようだった。
いや、あるいは知らないのかも知れない。
でも男は、何かを知っているようだった。
――君は、私に何かを感じるのかい? この死にぞこないの私に。
僕は思ったまま、綺麗だと伝えた。
――綺麗、か。
男はまた乾いた笑いを浮かべる。
――この翼を綺麗だと思うのなら……君に託そう。
何を?
――この黒い翼を。この私の……願いを。
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