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「サハラ。おーい、サーハーラー!? 起きろ猪突猛進ハゲぇ!!」
サハラと呼ばれた少年はそんな罵声に反応して目を醒ました。
「なんだよ誰だよ……」
サハラがベットから降り立つと、シャワーを浴びた後だろうか、濡れた髪の少年が立っていた。晴れ晴れとした顔である。
「今日は早めに起きてトレーニングするって言ったろー」
「お前と俺の『早い』は違うんだよアラン」
「うるせーなー」
アラン、と呼ばれた少年はそう膨れてみせる。
しかしアランは、そのオレンジ色の髪をばさっと掻き上げてにかっと笑った。
「じゃあ、俺ちゃん先に行ってるから!」
「あっ、ちょっと待てよおい!」
サハラの制止も虚しく、アランは部屋を駆け出していく。サハラは追いかけることはせず、ベットに改めて腰を下ろした。
「つーか俺ハゲちゃいねぇだろうが……」
先ほどのアランの言葉に反論しつつも、サハラは見ていた夢を思い出していた。
また、あの黒い翼の男だった。妙にリアルな質感を持った夢。夢の中で俺は幼く、男はひどく傷付いていた。あれが果たして本当に夢なのか、それともかつての記憶なのか。今の俺には判然としなかった。
感じている気怠さをどうにかするため、サハラはアランがそうしていたようにさっとシャワーを浴びる。そしてトレーニング用のウェアに着替えると、自室を出た。
サハラがいるのはユデックという名前の軍事基地だった。
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