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「まあ、冷たい手」
緊張を解すつもりか、介添え役の女性がわざとらしく大きな声を出した
春とはいえ、まだ風に冷たさの残る時期ではあるけれども、私の身体を凍りつかせているのは、そんなものではない
こういうときヴェールは便利だ。愛想笑いも出来ない私を隠してくれる
目の前にあるのは重厚な両開きのドア
このドアの向こうに彼がいる
もう、逃げられない…いや、初めから選択肢など与えられてはいなかった
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