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日中、ついに手渡せなかったバレンタインのプレゼント。
悩んだ挙句、ようやく呼び出した夜更けの頃。
寒空の下、幼き少女が街を一望する坂の上に佇む。
「はあ……やっぱこないのかな?」
誘った少年は、もう三十分待っても現れない。
雪が街に舞い降る十秒前――
凍えて小さな肩を震わせる。
――三秒の長いため息。
涙がじわりと浮かぶ。
堪えきれず立ち去りかけたその時――雪の花びらが寒さに赤くなった少女の鼻先にふわりと落ちてくる。
「ご、ごめん、待ったっ?」
ふいに呼びかけられて振り向くと、そこには肩で息をしながら額に汗を浮かべる少年が立っていた。
パッと笑顔の花が雪の降る夜に咲く――
少女の想いが舞降る雪をハートの形に変え、微笑む少年の肩に次々に落ちてくる。
今夜、二人の距離をぐっと縮めたのはそう――この小さな少女の大きな勇気。
十秒で奏でるラブソング。
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