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そして、ある階数まで上がって、そこで止まる。
(……えっ?)
それは……社長室のある階。
不意に、昨日の佐倉さんの怒った横顔が浮かんだ。
『……フザケんな』
そう言った彼の顔は、それまで一度も見たことのないほどの怒りを滲ませていた。
「まさかね……」
そう呟いてみたけど。
単なる営業の一社員が、社長室に用事があるとは考えられない。
私は、足早にエレベーターの前に行くと、急いでボタンを押した。
すぐ降りて来て欲しいのに、こういう時に限って、違う階数に止まって、また上に上がって行ってしまう。
私は、エレベーターを諦めて、階段に向かった。
そして、社長室の階を目指して、走りながら上がっていく。
ヒールで、こんなに走るのは久しぶりで、足首が痛んだけど、嫌な胸騒ぎに、私は全力で駆け上がった。
「はぁはぁ……!着い、た……っ」
息が切れて苦しくなった頃、やっと社長室の階にたどり着く。
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