5piece 見えない本心

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そして、ある階数まで上がって、そこで止まる。 (……えっ?) それは……社長室のある階。 不意に、昨日の佐倉さんの怒った横顔が浮かんだ。 『……フザケんな』 そう言った彼の顔は、それまで一度も見たことのないほどの怒りを滲ませていた。 「まさかね……」 そう呟いてみたけど。 単なる営業の一社員が、社長室に用事があるとは考えられない。 私は、足早にエレベーターの前に行くと、急いでボタンを押した。 すぐ降りて来て欲しいのに、こういう時に限って、違う階数に止まって、また上に上がって行ってしまう。 私は、エレベーターを諦めて、階段に向かった。 そして、社長室の階を目指して、走りながら上がっていく。 ヒールで、こんなに走るのは久しぶりで、足首が痛んだけど、嫌な胸騒ぎに、私は全力で駆け上がった。 「はぁはぁ……!着い、た……っ」 息が切れて苦しくなった頃、やっと社長室の階にたどり着く。
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