第6話 ノンフィクション率1%

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「あのね、今日の2月14日ってね、ここでは『バレンタインデー』っていう大事な人への贈り物をする日なんだって。だから私、魂抜きの呪文を使ったの。『貴方の心が欲しいです』って」  胸に抱える箱を大切そうに見つめて笑っていた。 「そうしたら『良いですよ、あなたなら』って………驚いちゃった」  とてもきれいな笑顔だった。 「『これ』がご主人様の力になるってわかってるけど、それでも、離したくない」  消えた彼女が手にした愛しく温かいものは、今は本来の持ち主に『戻り』、今日も悩める者達の言葉に耳を傾けていた。  その視線が時々、誰かを探すようにさ迷うのを認めて、彼女の思いは一方通行ではなかったのだなと、自然に微笑んでいる自分に私は驚いたのだった。   了
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