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おおっ、ラッキー。仕事が休みだったのかもしれないな――
ワクワクしながら待つ事暫し、引き戸を開けた葵さんが顔を覗かせる。
「おはようございます。あの、荷物が届いていると思いまして」
「千秋さんからのですよね? はい、こちらになります」
玄関に置かれていた、段ボールを手渡されたのだが――中身がチョコだけじゃないらしい大きさに驚きつつ、笑顔で受け取った。
「井上さん、これもどうぞ。昨日、お渡し出来なかったから」
「あ、わざわざスミマセン。ありがとうございます」
手に持っていた段ボールの上に置かれた、手作りチョコらしき小箱。
「も、勿論コレには深い意味はありませんから、安心して食べて下さいね」
ハッとして頬を染め上げながら説明してくれる葵さんに、分かってますよと声をかける。以前、告白され断った経緯があるからこそ、気を遣わせているな。
「葵さんから戴いたチョコのお返しみたいになってしまうんですが、これ地元のお土産です。ヤスヒロと一緒に食べて下さい。それじゃあ仕事の準備があるので、失礼します」
持っていた段ボールの影に隠していた手土産を渡して、さっさと葵さん宅を後にする。何故なら、千秋からの荷物を早く開けたかったから。
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