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「チャーシューメン。煮玉子付けて」
「……冷やし中華」
運よく座れたカウンター席に二人並び、注文する。
「はいよ」と返事をした強面の店員が私達の注文を厨房へ伝えた。
氷がふたつ浮かんだ水のグラスを手に取り、ひと口含んで熱くなった身体に流し込む。
ひんやりと冷たい水が私の中を通っていくのが分かった。
「琴音は“ない”って言ってるけど、高良くんは分かんないよ」
同じ様にグラスを手にする桃香が言う。
「そんなことないよ」
むくむくと沸き起こる期待を抑える為に、もうひと口水を流し込む。
「もし何かあっても言わなくていいからね」
カウンターに肘をつき、頬杖をする桃香が厨房を眺めながら笑った。
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