第1章

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骨折だの入院だのと言っていたあの女子の言葉を、まるで鵜呑みにしてしまった自分を恥じ入る瞬間だった。 ふと、桐ボーの表情が固くなる。 それだけで場の空気が一気に引き締まり、桐ボーの威厳が肌に沁みて感じられるようだ。 僕も、ポメ倉が転校してしまったことを言わなければならなかったので、思わず背筋を伸ばした。 「行っちゃったか?」 そう聞かれたので、僕は首を傾げる。 「ポメ倉は、行っちゃったか」 え?と、喉から自然に声が出た。知ってたの、と聞くと、桐ボーは小さく頷く。 「秘密基地が壊される前の日の話。帰り道、俺とポメ倉は同じ方向だから、その時に」 「そう、なの」 だからポメ倉は、「何で桐ボー、今日けーへんかったんやろ。お別れやのに」と言ったのだ。知っているのに何故なのだ、と。 「ポメ倉はあの日さ、秘密基地で、サンタたちに言うつもりだったんだよ。転校すること。でも秘密基地が壊されて、そんな空気じゃなくなったろ」 僕は、あの日のことを思い浮かべた。 大人たちの手で、僕らの世界を壊された日だ。あの日を境に、砂の城が波によってさらわれていくように、ボロボロと僕らのなにかが崩れていった。
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