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骨折だの入院だのと言っていたあの女子の言葉を、まるで鵜呑みにしてしまった自分を恥じ入る瞬間だった。
ふと、桐ボーの表情が固くなる。
それだけで場の空気が一気に引き締まり、桐ボーの威厳が肌に沁みて感じられるようだ。
僕も、ポメ倉が転校してしまったことを言わなければならなかったので、思わず背筋を伸ばした。
「行っちゃったか?」
そう聞かれたので、僕は首を傾げる。
「ポメ倉は、行っちゃったか」
え?と、喉から自然に声が出た。知ってたの、と聞くと、桐ボーは小さく頷く。
「秘密基地が壊される前の日の話。帰り道、俺とポメ倉は同じ方向だから、その時に」
「そう、なの」
だからポメ倉は、「何で桐ボー、今日けーへんかったんやろ。お別れやのに」と言ったのだ。知っているのに何故なのだ、と。
「ポメ倉はあの日さ、秘密基地で、サンタたちに言うつもりだったんだよ。転校すること。でも秘密基地が壊されて、そんな空気じゃなくなったろ」
僕は、あの日のことを思い浮かべた。
大人たちの手で、僕らの世界を壊された日だ。あの日を境に、砂の城が波によってさらわれていくように、ボロボロと僕らのなにかが崩れていった。
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