最終話

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「理央くん」 彼がプライベートでそう呼ぶようになったのはここ最近。 2人で何度か会社帰りに飲みに行った話の流れでそうなった。 淳君にそう呼ばれることは嫌じゃないし 違和感もない。 「ん?」 カウンターの隣に座っている彼に視線だけ向ける。 「姉ちゃんとこって忙しくて会社に泊まるような事結構あるの?」 「……」 伺うような目をして遠慮がちに聞いている。 なぜこの質問が出てきたのだろうか。 「先輩帰ってこないの?」 「うーん……忙しいみたい」 会社に泊まる事はありえないと、直ぐに思った。 「トラブルがあったって同僚の人が言ってた」 「……同僚?」 「うん、初見って呼ばれてた」 「……」 「それって初見建設の身内の人って事だよね?」 「……」 「理央くん知ってる?」 覗き込まれ、視界に彼の顔が入る。 「……あぁ。 先輩の同期なんだよ」 「へぇ、なんか良さそうな車乗ってた」 「……どこで会ったの?」 彼の方に体を向ける。
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