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片足を半歩後ろに引いたとき、私の耳に別の声が届いた。
「実は私も『キミハル』あんまり好きじゃないんだよねー…」
「何気に俺も『マッスル高木』の隠れファンだったりして。」
鋭利な色の隙間から顔を覗かせる、柔らかな暖色。
私の色は他の色と混ざり合い、新たな色を生み出していく。
「私、今日から原ちゃんのこと依里子ちゃんって呼ぶ!」
「それなら俺はえりって呼んじゃう。」
「待った。」
他の人たちに目線が行っていて、いつの間にか陽向くんが私の前に立っていたことに気づかなかった。
誰よりも眩しい色を持つ人。
「男子はコイツを下の名前で呼ぶの、禁止。」
そして次の瞬間には、私の身体は陽向くんの両腕にすっぽりと包まれていた。
「あー…んな可愛い顔で告白すんなって。ライバル増えんじゃん。」
陽向くんの声が柔らかく降ってくる。
「さっき、ひどいこと言ってごめん。」
あなたの肩越しに見える景色は、前よりキラキラしていて。
私に色が戻っただけじゃない。
私の世界に、色が増えた。
「俺も依里子が好き。依里子の色が、好きだ。」
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