超妄想シリーズ16

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 テレビから流れるニュースを見て愕然とした。  世界中からオレを除いて男が全員消失したという。  最悪だ…この世の終わりだ…。  オレは隠れゲイで、男が好きなんだ!  橘ハジメ。21歳。大学とアルバイト先に通うだけが毎日の平凡な学生。  無趣味。彼女イラナイ歴21年。彼氏イナイ歴21年。  オレの略歴なんてざっとこんなもんだ。平凡中の平凡、凡庸中の凡庸だ。  そんなオレだけがどうしてこの世界に残されたのか。  理解できない。  いや、理不尽で不条理極まりない。  運が悪いせいか。  いままで生きてきてクジに当たったことが一度もなければ、歩くと信号機か必ず赤になるほどだからな。  いや、それだけの理由で取り残されたとしたらひどすぎないか。  そういえば、この世は最初からオレに冷たかった。  というのか、未成年でトランスジェンダー(性同一性障害)だと発覚するのは死刑宣告を受けたようなものだ。  小学生の頃から「女より男に惹かれる」「カッコイイ男をみると胸がときめく」という、「憧れ」でごまかしがきく時代は世間も自分も気持ちを騙しながら生きてこれた。  でも、中学生になると自分の心は隠せなかった。  たくましい男の体にふれてみたいという願望が高まっていったし、その感情を自分でも変だとは自覚していた。  男の体に興奮する激しい衝動が性欲だと気づいたときには開き直るしかなかった。オレは男が好きなんだと。  でも、ばれたらイジメの対象になる。男からも女からも蔑まれ、嫌われ、無視され、人間扱いされなくなる。下手をすると暴力まで振るわれたり、ネットで将来を潰されるような嫌がらせをされる。  仕方がないから、嫌々オンナが好きなふりをしてきた。それでも「ふり」なだけにどこかで無理が出てくる。女の話が出てもオレの反応はワンテンポ遅い。ヤバイと思ってあわてて合わせるせいだ。男子だけでスマホでオンナの裸を見てもオレだけが冷静だ。  さすがにこれはマズイと思ったオレは対策を考えた。 「オレ、本当はオタクで二次元の女子が好きなんだ。三次元女子はかわいくても無理」
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