488人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「なんで全部あげちゃうの? 普通、そういうのは彼女がもらうものでしょ?」
紗綾はさっきからご立腹の様子。
予約しておいたフレンチレストランでバレンタインデートをしたところまでは良かった。
いかにも数量限定の高そうなチョコと一緒に、これまた高そうな長財布をプレゼントしてもらった。
それはありがたいのだが、それに見合った物をこっちも贈らなければと思うとついため息が零れそうになる。
来月のお返しを買う金をどこから捻出しようかと真剣に悩んだ。
そんな俺の気も知らないで、紗綾は平気で食事を中途半端に残して、拓海の家に早く行きたいと言い出した。
紗綾も早くヤりたいんだろうと思ったのは勘違いだったらしい。
俺の家に入るなり、「どこ?」と聞かれて頭の中は疑問符だらけになった。
「拓海がもらって来たチョコ、どこ? いっぱいもらったんでしょ?」
全部義理の安っぽいやつだったから同僚にあげたと言ったら、いきなり怒り出したというわけ。
俺がもらったものを誰にあげようと俺の勝手だ。
「同僚って女?」
「いや。モテない男どもに配ってやった」
正直に女にあげたなんて言って波風を立てることはしない。
自分の彼氏がかなりのイケメンでモテモテだということは、紗綾にとって自尊心をくすぐられるらしい。
他の女に取られるんじゃないかという心配は全くしない。
どこからその自信が来るのかわからないが、とりあえず紗綾の機嫌は直りつつあった。
「拓海はモテモテだもんね」
「でも、俺が好きなのは紗綾だよ」
厳密に言えば紗綾の体。それだって好きと言えるかどうか怪しい。
でも、とりあえず今は必要だ。
レナが今頃どうしているか考えたくないこんな日には。
最初のコメントを投稿しよう!