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プロローグ
――この世界には、怖い事があり過ぎる。
「あら、ミツヒデ。貴方は軟禁小屋から出てきてはいけないのではなかったかしら?」
唯一心許せた異性の相手。幼馴染の女の子が紅い月を描いている。その手を血で真っ赤に染めて、彼女は嗤っていた。
――だから壊してしまおう、と。
「せっかく貴方に素敵なプレゼントをあげようと準備していたのに、これでは台無しじゃない」
死屍累々。赤い絨毯の上を悠々と歩いて、幼さの残る彼女はまた一つ声を奪った。
――それは確かに、悪夢だった。
「なるべくこの方法は取りたくなかったのだけれど、もう、貴方もこうするしかないのかしら」
確かにあった、悪夢だった。
「大丈夫よ。痛まないようにするわ。それに、貴方が寂しくならないように私もすぐに後を追ってあげるから」
俺達はまだ、優しい夢を見続けている。
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