78人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
貴方はそうおっしゃるけれど、
在学中に私を見初めて
求婚された殿方たちを、
私が何人振ったかご存知?
片手では収まらぬのですよ。
そんな手前味噌を申したところで、
貴方はきっと一笑に伏されるだけで
まともには取り合っては下さらぬでしょう。
憎い、憎いかた。
こうして何も手に入れられぬまま、
伯爵の父がとうとう
どこぞの公爵家との縁談話を
まとめておしまいになったのよ。
心に愛しい面影を思いながら、
違うひとに抱かれろというのですか。
嫌です、そんなのは嫌――。
絶望の夜の月はおぼろで、
我知らずふらふらと行きつきますのは
今宵あの方のお泊りになる仮の宿り。
最初のコメントを投稿しよう!