姉 祥子の物語 《今宵、ただ一夜》

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私は旧幕臣にして伯の爵位賜る 六条家が一女、 六条祥子(しょうこ)と申します。 かねてより私の心には ただひとり恋い慕う御方が いらっしゃいます。 その方の名は奏一様。 二八の若さで 日本帝国陸軍中尉をお勤めになる ご立派な御方です。 そのお身体は健やかにして強靭、 五尺八寸(176㎝)の 見上げるほどに高い背丈。 私の背は四尺八寸(145㎝) でございますから、 なんと一尺(30㎝)もの 開きがあるのです。 女学校を卒業したての私とは 歳がまた10も離れておりますから、 あの方にとって私は 「子供にしか見えぬ」 のだそうですわ。……
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