八章

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ネットワーク内の自分の痕跡を綺麗に消して、佐伯は繋いでいたコードを全て外しにかかる。 春斗が銀狼として朝比奈に発見された時点で、このハッキングの犯人は鴉だと言っているも同じことだが、それでも相手に少しでも情報を与えない方がいいだろう。 鴉がこの学園にいるとわかった以上、彼らは自分のことも探し始めることだろう。 もともとは春斗の姉である亜蝶に頼まれただけだったというのに、自分はどうやら彼に絆されてしまったらしい。 この程度の我儘を許してやれるくらいには心を開いていると言える。 それにしても今回はかなり際どい争いであった。 長い間ロクなやつと情報の取り合いをしてこなかったせいか、知らない間に腕が鈍ってしまったらしい。 蒼龍と紅月の情報担当の二人を相手にかなり苦戦してしまった。 「面倒な事になったね…」 そしてその情報戦の最中、佐伯は第三者の存在に気付いた。 風紀や生徒会、そして親衛隊とも違った奇妙な集団。 まだ確証は無いため春斗と東雲に話すことはしないが、もし自分の考えている通りだとすればかなり厄介な相手になるだろう。 この先起こるであろうことに一抹の不安を感じながら、佐伯はそっと自身のパソコンを閉じて教室を去った。
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