Imperial Fizz - 楽しい会話 -

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それは間違いなくこの店に入って、出ていくときに聞くはずの音。 ぼやけた頭の中で理解してるはずの音は確かに聞こえてはいたが目覚ましには少し物足りなかったらしい。 「いらっしゃいませ」 そしてマスターの落ち着いた声が続いて聞こえる。 その後すぐカウンターとトントンと叩く小さな衝撃に目頭を押さえてた手を退け顔を上げた。 「凜さん、お迎えですよ」 「へ?」 「ちょっと!!ねえ、まさかのまさか?!」 横に座ってるはずの怜がテンションが上がったのか驚いたのか、未だに突発性な眠気に襲われてる私の肩を揺らす。 あまりの衝撃に酔いが一気に回りそうになった。 そして、マスターの言うお迎えの意味を理解しないまま首を動かした。 「凜、ただいま」 「・・・え」 振り向いたドアには見慣れたシルエットがあった。 見覚えがあり過ぎて声が詰まった。 「きゃー、奇跡!凜、呼んでくれたの?」 「んなわけ、携帯ずっと鞄の中・・」 「おかえりは言ってくれないの?凜」 ワントーン高い怜の叫び声が頭に響いた、そして吃驚して醒めた眠気を無視して鞄の中にあった携帯を確認する。 訳が分からないまま動揺する私の横ではしゃぐ怜と、嬉しそうな顔で見つめるマスター。 革靴特有の音を鳴らして歩み寄ってきた宮瀬が私の後ろ横に立った。 「え、あ・・おかえりなさい」 「うん、ただいま」 「あの帰りは土曜だったんじゃ・・」 「思った以上にスケジュールが早く回ってね」 「へ、へぇ・・」 来た時に埋まってたカウンターは、お客さんが引いたことで私たちの両隣は空席になっていた。 歩み寄ってきた宮瀬は私の横にそっと腰を下ろすと、マスターからおしぼりを受け取った。 そしていつものお酒を頼む。 「あ、あの宮瀬さん」 「なーんだ、呼び方元に戻ってんのか」 「は?いや、今は・・」 「凜、そちらは友達?」 きつく閉められていたネクタイを少し緩めた後、宮瀬は視界に入ったであろう怜を掌で指しそう問いかけた。 そして紹介しようとした私の声を跳ね除けて怜が喋りだす。 「お話しは聞いてます、初めまして」 一息ついた時に聞こえた怜の声はほんのばかし低い。 それが何を意味してるのかはよく理解していた。
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