カルテ1

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渋谷からちょっとだけ坂を登ったところに聳える 一見洒落たイタリアンレストランか?と見紛う程のスタイリッシュな面構えを見せる焼肉店。 最近のボスのお気に入りだ。 わたしは今、最高に幸せな時間を過ごしている。 ボスの奢りで高級な肉を食いまくっているからだ。 当たり前。 10月から2ヶ月、ほぼ休みなしで働いてきたんだ。 そして新年が明けた今でさえお雑煮だってありつけていない。 年末からは特に酷かった。 家にさえ帰らずに、働きまくったんだから。 これくらい、安いもんだ。 ってゆーか 安すぎる。 「有馬さん、あんまり生肉ばっかり食べると 身体にムシ湧きますよ?」 「はぁ!?」 シャトーブリアンをほぼ炙っただけで食べている私に横槍を突き刺してくる陣内。 「いくらいい肉だとは言っても、ある程度の加熱は必要です」 こいつの眼鏡と顔の間に炙った肉を詰めてやりたい。 相変わらず大爆笑のボスが それでもやっぱりレアの肉を私のお皿に入れてくる。 「陣内、こいつはねちょっとでも焼きすぎると 食わないんだ。 許してやって」 小さく笑いながら片手でグラスを煽った。
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