第2話 家族

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第2話 家族

翔子は憔悴し切っていた  何故と言うと ゆき子の言う通りで 潤一郎は 東京で女性と一緒に暮らしていた  しかも相手は 潤一郎が 高校時代に付き合っていた 高瀬川美鈴だった  美鈴は潤一郎と寄りを戻したくて 翔子より早くに東京に上京した 翔子は独り愚痴た 「負けた やっぱり離れたら負けよ 側に居る方が勝つに決まってる」 翔子は 長崎で長年勤めた会社で仕事を紹介して貰い  東京で再就職し やがて 東京に来て1年が過ぎた すでにベテランの域にある翔子は ある時 大手の車のメーカーと コラボしたCMを会社が製作し その打ち上げのパーティーに呼ばれていた 会社の上司が一人の青年を手招きして呼んだ 「野々村君 君ィこっちに来たまえ」 大手の車のメーカーの関連会社に勤めている その青年は 翔子の顔を見ると顔を赤くした 不完全燃焼の気持ちを引きずりながら 毎日の仕事に ただ脇目も振らず 真面目に勤め上げていた翔子は 28歳になっていた その野々村謙治と名乗る青年は 32歳だった  野々村は パーティーの帰り際に 単刀直入に行った 「風倉翔子さん 僕と結婚を前提に付き合って下さい」 「イヤっ 今返事をしないで下さい 僕の事を知ってからでいいんです」 そう言って 自分の連絡先を書いた紙を 強引に翔子の手に握らせて去っていった 翔子は 気を持たされ待たされ続け 結局 元の彼女と寄りを戻してしまった潤一郎と 全く異なるタイプの野々村と出会い 顔は翔子の好みでは無かったが 翔子に 強引に求愛してくる男性と接して 春の息吹のように爽やかに新鮮に感じた それから 徐々に二人は連絡を取り合うようになり やがてデートを重ねて行った 野々村謙治は 翔子と会える喜びに浮かれている訳では無かった 謙治は分かっていた 翔子のように純粋な女性で一途に 初恋の相手を プラトニックに思い続けるタイプは もしかすると生涯独身で思い続け兼ねないと 謙治は 翔子と恋人になるには 結婚するしか無いと心に決めていた デートする度に 「翔子さんと結婚出来たら幸せだろうなぁ?」 とか 「子供は 僕は男の子が欲しいなぁ」とか 根掘り葉掘り 翔子の過去の事や 友人関係や 両親や姉妹の事など ありとあらゆる事を 野々村謙治は 産まれ持って巧みな話術で 翔子から聞き出した 翔子は溜め息を付いた
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