第1章:フシギな人

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「エリカさん、ちょっと聞いていいですか?」 「たくさん聞いていいよ、なぁに?」 「あのですね。エリカさんってこんなに可愛くて、いい人そうなのに。その……どうしてこんなことをしてるのかなって」 (――売りをしている私のことを知りたいんだ、へぇ) 「ウソかホントか信じるのはケンジさんの自由だけど、それでも知りたい?」 「はい。すみません、興味があって」  ケンジさんは握りしめている私の手の甲を、労わるように撫で擦る。わざわざ気を遣って、そんなことをしなくてもいいのに。  そんな優しいケンジさんに苦笑いしながら、元彼に借金を背負わされたことや、返済があと50万円弱という話をしてあげた。 「私の人生が元彼のせいで一気に変わっちゃったけど、こうやっていろんな人と遊べるのも楽しいし、悪いことばかりじゃなかったよ」  私なりに、ごく自然に明るい声で告げたというのに、ケンジさんはいきなり立ちあがって、空いていた私の片方の手もぎゅっと掴んだ。 「ケンジさん?」 「エリカさん、残りの50万円を俺が全額支払います! そうすればお互い幸せになれるんだから!」 (お互いが幸せになれるって、いったいどういうことなんだろう?) 「ちょっと待って。いきなりそんなことを言われても困る……」 「俺自身、個人的な事情があって、どうしても手元にお金を残しておきたくないんです。その事情は、ちょっと言えないんですけど……。でもエリカさんのために使うことができるなら、俺は本望ですっ!」  鼻の穴を広げて興奮する様子に、困り果てるしかない。 「……ケンジさんってば50万円で、私の人生を買おうとしてます?」 「へっ!? エリカさんの人生を買う?」
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