エピローグ――――「赤い髪の、あたしの……」

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「気分は……良いみたいだな?」 「ああ、まだちょっと痛むけど、平気だよ」 「そりゃよかった」伸司は薔薇乃のほうを顎でしゃくるようにして、「さっきまで依頼のことで話してたんだがな。岸上のお嬢さんから、お前らに話があるそうだ」  薔薇乃は十香と美夜子の対面のソファへと座る。彼女の右手には包帯が巻かれていた。 「話って、なんだ?」 「この度は、お二人に多大な迷惑をおかけしました。身内でのトラブルに巻き込んでしまい、大変申し訳なく思っています。つきましては、今回のお詫びをと思いまして」 「お詫び……?」 「亀井さんの怪我の治療費はもちろんこちらで負担いたします。それとは別に、お二人には慰謝料としてそれぞれ一千万、お渡ししたいと考えているのですが」 「一千万だって!?」  十香はソファから飛び上がりそうになる。薔薇乃は小さく首をかしげ、 「一千万ではご満足いただけません? それではその倍でも――」 「違う違う! そうじゃなくて! いきなりそんな金渡されてもあたし、困るよ! 親にどうやって説明すりゃいいんだよ!?」 「まぁ……そこは、なんとか」 「なんとか、じゃねーよ」十香は手をひらひらと振る。「いらないいらない。そんなデカい額、こっちもびびっちまうよ。治療費だけくれりゃ、それで充分だって」 「そう言われましても……それではこちらが納得いきません。では、お金以外のことでも結構です。なにか、わたくしに頼み事など、ありませんか?」 「頼み事ねぇ……」  十香は一応、考えてみる。 「うーん……何かあったかな……」 「目障りな人間一人くらいなら、消してみせますよ?」 「こえーよ!」 「ふふっ、今のはジョークです」 「お前が言うとまるでジョークになってないの、わかってる?」  魅冬もそうだったが、こいつも笑いのセンスはどこかおかしいようだ。
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