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「……会いたくない……っていうのはさ。お前と仲良くなるのが、怖かったからなんだ」
「……どういうこと?」
「昔……友達だと思ってたやつらから、裏切られたことがある。それはあたしにとって、すごく……今でも夢に見ちまうくらい、キツい記憶なんだ。それ以来あたしは、友達なんていらないって思ってて……高校に入ってからもずっと、一人だった。悪ぶって、強がって、周りの連中から距離をとるようにしてたら、いつの間にかあたしに近寄ってくるやつは誰もいなくなってた。あたしは、それでもいいと思ってたんだ。そのほうが気楽だし、なにより、弱みを作らなくて済むから。でも……昨日、お前と色々話していて……あたし、楽しかった……楽しかったんだ。だから、本当の弱っちいあたしを知られて、お前に落胆されるのが怖かった。お前がそんなやつじゃないってことも、わかってたつもりだけど……どうしてもその考えを振り切ることができなくて……だから、あんなこと言っちまったんだ。……ごめん」
「十香ちゃん……」
十香は弱々しく笑って、
「ほんとに、悪いな。こんな話聞かされて、お前も困るよな。……でも、どうしても言っておきたかったんだ。それで、もう一つ言うことはあって……こんな話の後で、なんなんだって思うかもしれないけど……ああ、もう! と、とにかく、言うぞ……!」
――うじうじと悩むのは、もうやめよう。昔のことのために明日をふいにするなんて、バカらしいじゃないか。『自分がどうしたいか』、それが重要なんだろ? そんなこと、とっくにわかってるさ。
十香は深呼吸して気持ちを落ち着けようとしてから、次に美夜子の目を見て言う。
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