エピローグ――――「赤い髪の、あたしの……」

5/13
前へ
/211ページ
次へ
「……会いたくない……っていうのはさ。お前と仲良くなるのが、怖かったからなんだ」 「……どういうこと?」 「昔……友達だと思ってたやつらから、裏切られたことがある。それはあたしにとって、すごく……今でも夢に見ちまうくらい、キツい記憶なんだ。それ以来あたしは、友達なんていらないって思ってて……高校に入ってからもずっと、一人だった。悪ぶって、強がって、周りの連中から距離をとるようにしてたら、いつの間にかあたしに近寄ってくるやつは誰もいなくなってた。あたしは、それでもいいと思ってたんだ。そのほうが気楽だし、なにより、弱みを作らなくて済むから。でも……昨日、お前と色々話していて……あたし、楽しかった……楽しかったんだ。だから、本当の弱っちいあたしを知られて、お前に落胆されるのが怖かった。お前がそんなやつじゃないってことも、わかってたつもりだけど……どうしてもその考えを振り切ることができなくて……だから、あんなこと言っちまったんだ。……ごめん」 「十香ちゃん……」  十香は弱々しく笑って、 「ほんとに、悪いな。こんな話聞かされて、お前も困るよな。……でも、どうしても言っておきたかったんだ。それで、もう一つ言うことはあって……こんな話の後で、なんなんだって思うかもしれないけど……ああ、もう! と、とにかく、言うぞ……!」  ――うじうじと悩むのは、もうやめよう。昔のことのために明日をふいにするなんて、バカらしいじゃないか。『自分がどうしたいか』、それが重要なんだろ? そんなこと、とっくにわかってるさ。  十香は深呼吸して気持ちを落ち着けようとしてから、次に美夜子の目を見て言う。
/211ページ

最初のコメントを投稿しよう!

212人が本棚に入れています
本棚に追加