エピローグ――――「赤い髪の、あたしの……」

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「――あたしは、お前と友達になりたい」  ……言った。言ってやった。  美夜子はしばらく黙ったまま、答えない。 「……だめ、か?」  不安になって尋ねると、美夜子は慌てたように首を横に振る。 「違う……そうじゃなくてね」美夜子は笑って言う。「なんだかおかしいなって……だって、あたしたち、とっくに友達だと思ってたから!」 「あ……あれ? そ、そうか?」 「うん。でも……十香ちゃんが正直に色々話してくれて、嬉しいよ、とっても! ……あ、そうだ! じゃあじゃあ、アレしよう?」 「アレ?」 「友情のハグ! 友達になった証として!」 「なんだその文化? 聞いたことねーよ……って、あっ、ちょっと待っ――」  十香は美夜子に抱きつかれて体勢を崩し、そのままソファに倒れ込んでしまった。美夜子は猫のようにじゃれかかりながら、十香の顔へ頬をすり寄せるようにする。 「えへへ、十香ちゃん好き! 大好きー!」 「うわ、ちょ……やめろよ、こら……」  そのとき、部屋入り口の扉が開く音がして、誰かが入ってくる。伸司だった。伸司は十香と美夜子を見て、ぎょっとする。……デジャヴだ。 「おいおい、こいつらまた抱き合ってるよ……」 「ち、違うって!!」  いや、まぁ、違わないのだけれど。でも違うのだ。 「まぁ、お二人とも、そんなに仲がよろしかったのですね」  伸司とは別の声。この声は…… 「あ……岸上」 「どうも、お邪魔させていただいております」  上品な動きで頭を軽く下げる。 「ああ、こりゃどうもご丁寧に」  十香は美夜子をなんとか押しのけて、ソファに座り直した。伸司はコートを脱いで壁際のハンガーに掛けながら、十香へ尋ねる。
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