エピローグ――――「赤い髪の、あたしの……」

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「――それでは、わたくしの用件はこれで終わりです。おいとまさせていただきましょう」 「なんだ、もう帰んの?」  十香が尋ねる。 「ええ。織江さんを車に待たせていますし、それに明日には魅冬さんを乗せた飛行機が飛んでしまいますので……今宵は少しでも長く、共に時間を過ごそうかと」 「そっか……。ああ、そうだ。織江さんにもう一度、ありがとうって伝えておいてくれよ。あたし、ちゃんとお礼言わないままだったからさ」 「わかりました。必ず伝えておきます」  薔薇乃はダンボール箱に敷いてあった毛布ごと、子犬を抱え上げる。子犬は薔薇乃のことを嫌がるようでもなく、おとなしいものだ。 「名前は、まだないのでしょうか?」 「ない。好きにつけてくれ」 「名前、名前……悩んでしまいますね。じっくり考えることにいたしましょう。それでは、わたくしはこれで――」 「あ、ちょっと待って。最後だから……」  十香は手を伸ばし、子犬の頭を撫でてやる。すると、それに応えるかのように、指先を子犬が舐めた。  別れるのは少しばかり寂しい気もしたが、薔薇乃ならしっかり飼ってくれそうなので安心だ。 「じゃあ……元気でな。でっかくなれよ」
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