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開いた口が塞がらないとはこのことか。
これだから影響を受けやすいやつは困るんだ。
「あのなぁ…ここは忍者アカデミーじゃねーから。中間試験と中忍試験は別もんだ!」
いくら一文字違いでも、そこは間違えちゃダメだろう!
「漫画を鵜呑みにしちゃいけません!」
俺はどっかの子育てママのようなことを叫んだ。
しかし魔王の成績が異様に良かった謎がこれで解けた。
「テストは自分の力だけで受けるもんなの。カンニングダメ絶対」
「己の力で受けておるではないか。石の力は我の力だ」
「……いやまぁそうなんだけど」
「だからカンニングなどではない」
あまりにも自信満々に断言された俺は一瞬、「あれ? そうなのかな?」と丸め込まれてしまいそうになった。
「――いやいやいやダメだろ? ダメだよな?」
ちょっと自信がなくなってきた。
「ダメなどではないかろう。石の力は我のもの。我のものは我のもの」
「……」
これまたどこかで聞いたようなセリフをドヤ顔で言う魔王に俺は沈黙で答えた。
他人のものを自分のものだと言い張るわけではないんだし、だんだん魔王の主張が正しい気がしてきたのだ。
――ごめん、俺、教育ママにはなれそうにねーや。
「おまえまさか将来の夢は忍者とか言い出さないよな?」
「将来の夢…?」
そう云えば、こんな話を魔王とするのは初めてだ。
小学生のときの卒業文集に将来の夢を書くコーナーがあったが、俺は転校してしまっていたので魔王がどんなことをそこに書いたのか、そもそも魔王が文集を書いたかどうかも知らない。
それに忍者はともかく働く魔王とかちょっと想像がつかないが。
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