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喜一がいなくなってから、三日が経った
あの後、動けなくなった私を見つけてくれたのは龍之介さんで…お雪が龍之介さんに事の事情を説明し、探し回っていたそうだ
龍「邪魔するぞ。今日も一人で稽古か?飽きずによくやるなぁ」
葵「龍之介さん、いらっしゃってたんですか」
龍「ちと前にな!調子はどうだい?」
龍之介さんに連れられて帰ったあの日、もしかしたら…いつものように家で待っているんじゃないかと、どこか期待をしていました。
まあ、そんな甘い話があるわけないが
いつものように、変わらない様子で一人稽古をしていた私を見た龍之介さんは…一礼してから場内に足を踏み入れる
ちなみにですが、次の日に来た小太郎達には…暫く稽古はしないと伝えています
龍「小太郎達が心配してた。一日中竹刀振ってられる元気があるなら、相手してやってくれ」
葵「…そうですねぇ」
私の手から竹刀を抜いた龍之介さんは、優しい笑みを浮かべながらも…どこか探るような目をしている
何があったんだと、何を考えているんだと
あの日ですら何も聞かないでくれていた龍之介さん達に……そろそろ話さねばいけませんね
葵「……龍之介さん。少し、話をしてもいいでしょうか」
龍「いやだ」
葵「では……え?やだ?」
龍「ああ、いやだぞ」
………聞き間違いじゃなかっただと?
意を決して今考えていることを離そうと切り出せば、何故か龍之介さんはいやだと首を横に振った
なぜだ?どういうことなんだ
葵「あの……結構真面目な話をですね」
龍「そのくらいわかるぞ。だが断る」
葵「話してもいないのに何を断るんですか。とりあえず聞いてくださいよ」
龍「"もう子供達に稽古をつけることはできない"。そう言おうとしているだろう」
頑なにいやだと断り続けていた龍之介さんの口から出た言葉に、続けようとしていた言葉が消える
……バレていましたか
龍之介さんのいう通り、もう…人に教えることを放棄しようとしていた私は、それでもと言葉を続けた
葵「……私には、やはり人に教えるという才能がないんです。龍之介さんの方が、性に合っているでしょう」
私じゃまた、壊してしまう
もう……嫌なんですよ
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