新しい靴を履いて

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もう限界かな。 そうやって呟くのは、誰かに止めてほしいからかもしれない。 案の定、裕美は「もったいないよ。私は応援してるんだからね」と言ってくれた。 裕美の性格を分かっていて、こんなことを言う私はずるいと思う。 手元のコーヒーはすっかり冷めてしまった。 「でもねー、留年はさすがにないでしょ。私は一緒に卒業して、一緒に社会人になって……そうやってこれからも続いていくと思ってたんだから」 「亜美がそう思うなら仕方ないけどさ、孝之くんとって中三からで、もう八年目でしょ?私は憧れてたし、続くといいなって思うけど」 残念そうに言う裕美はグラスをストローでかき混ぜる。 飲んでいたアイスティーはすでになく、残った氷だけが音を立てながら回っている。 「んー、でもね、孝之のどこが好きだったのか、あんまり思い出せないんだよね」 嘘をついた。 好きだったところはちゃんと思い出せたが、別れることは、心のどこかで結論づいていたように思う。 それを上手く説明できなかった。 裕美は、えーひどい、と言いながらもどこか楽しそうだ。 裕美が笑ってくれるので、なんだか救われる。 裕美が手持無沙汰にしているので、私もコーヒーを飲み干した。
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