彼女の拒絶

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「断捨離、苦手そうだね」 日本に居られたら、僕は傍らに座ってウンウン悩む彼女をじっくりいじれるのに。 『え、私って部屋汚いイメージですか?』 「いやいや。情が深いから」 『……頑張ります』 彼女がやたら厳かに宣言したので、微笑ましくて笑ってしまった。 きっと桐谷関係の物もたくさんあるはずだ。 腹立たしいほど健気だから、やると言ったら本当にやるに違いない。 その気持ちだけで僕は十分だ。 「いいよ、無理して捨てなくても。全部持っておいで」 彼女にはどんな小さな悲しみでも我慢して欲しくない。 彼女が大切にしている物は僕にとっても大切だから。 たとえそれが桐谷にまつわる物だとしても、僕は彼女が抱えるもの丸ごと好きだから。 気づくと、彼女と離れている間にささくれ立っていた嫉妬や不安は寛容な気分に変わっていた。 「そろそろ行かないと。今回は嫌な相手でね。声を聞いて元気が出たよ」 怒るのも拗ねるのも不安がるのも、彼女はいつもふんわり柔らかい。 口では包容力のあるようなことを言いながら、本質では僕はその優しい母性に甘えているのだ。
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