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『あーそこまで主任のキャラ崩した彼女さん、会ってみたいなぁ』
正確には“彼女”ではない。
そこが僕たちの脆いところ。
恋愛段階を経ていないところが。
『瀧沢里英さん、でしょ?そっちから情報回って来ましたよ。経理部ですよね?社内ってびっくりしましたよ。主任、社内ではお手付きしない主義だったのに』
「お手付きって人聞き悪いな」
まあ押し退けられたから、ある意味“お手付き未遂”なんだけど。
『あー見てみたい』
「そのうち会えるかもね。お手付きとかポイポイとか余計なことを言いふらさなければ」
水野はまだ赴任のことを知らないけれど、いずれ赴任すれば否応なしに水野夫妻と絡むことになるだろう。
せめて居住エリアは遠めにしようと諦めのため息をつく。
『えっ、会えるって……あっ!もしかして新婚旅行、アメリカですか?俺アテンドするんで是非その彼女さ…』
「携帯に電話かかってきたから切るよ。じゃあまた」
『あっ、主任ちょっと』
あまりに水野がやかましいので強引に切った。
本当は電話じゃなくてメールだったんだけど。
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