誘惑

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「まさかと思ったけど空いてたな」 面白そうに笑う彼は、必死にドアの方向へと手を伸ばす私を引き寄せる。 あと少し…… 数センチで目の前のドアノブに届くのに…… 用意周到に既に施錠されている。 閉じ込められたんだ…… 理解不能な状況の中、怒りが一気に込み上げて来て私は力任せにもがいた。 だけど、その度に彼は私を力の差で抑えつける。 鼻孔をくすぐるのはかつて好きだった香り。 それが胸を締め付けてくるから、居たたまれない気持ちになってくる。 「真菜、暴れるなって」 少し困ったような顔が見下ろしてくる。 「じゃあ、ここから出してよ」 私はたまらなくなって声を上げた。
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