野口さん

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 黒板の前に立ち、学級委員長は思い出を語った。本当に最高の3年1組でしたと。  これで挨拶が終わったと思いきや「最後に皆に言いたいことがあります」と続けた。 「なんだよ委員長」    彼女は涙を拭うと、可愛らしい微笑みを消した。 「今日でやっと嫌な思い出を忘れられるって思っていませんか?  ううん、既に隅っこの野口さんの席を見ても、今日も花が生けられているなってぐらいの感覚かもしれません。  皆はいいですね。だって、見えていないんだもん。私は彼女が自殺した日からずっと、血みどろの顔とギョロギョロ動く瞳に怯えていました。  今日も野口さんは皆のことを許さないって呟いています。ほら、聞こえませんか?」  委員長は血の気の引いた顔で野口さんの席を指差すと、気を失ってその場に倒れた。数名が慌てて彼女に駆け寄る。    それから皆、恐る恐る振り返り野口さんの席を見つめた――。
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