283人が本棚に入れています
本棚に追加
/194ページ
「すまん。ちょっと遅れちまった」
五分後、目的の大通り公園に辿り着いた俺は、見知った顔に向けて声をかけた。
直径五十メートルほどの円形の閑静な公園には、既に二人の特対の仲間が到着していた。通信用のヘッドセットを装着した二人の影が、荒れ放題の芝生に長く伸びている。
「……誰だ?」
公園の中央で、腕組みしながら立つ男が怪訝な顔で答えた。軽くウェーブした茶髪に銀縁眼鏡。薄く色の入ったレンズが西日を受けてちかと瞬く。
男の名は、エメロ・ジャスティン。
「おいおい。エメロ、俺だ……って、そうか。今は違うんだった」
そうだった。取りあえず合流を優先して、この状況をどう説明するか考えていなかった。
何を言おうか思案していたら、
「あれ、背中にいるの先輩じゃないっスか!? 先輩ひどいっス! 私というものがありながら、そんな美人と密着するなんてっ!」
エメロの後ろに立っていた女が、頬を膨らませながら駆け寄ってきた。
癖の強い赤毛を強引にポニーテールにまとめたそばかす顔の女で、八重歯が印象的な特対の後輩。マツリ・ジャスティン。
こいつは俺を慕っているらしく、何かと理由をつけては寮の部屋に侵入してこようとする。しかも深夜限定で。勿論、撃退率は百パーセントだ。
ちなみにエメロと名字が一緒なのは、エメロの部下であると同時に妹でもあるからだ。
「待て、マツリ。ちょっと様子がおかしい」
エメロが部下で妹のマツリを制して、俺に視線を向けた。
「……お嬢さん。レドは電話で悪いニュースがあると言っていた。君が何か知っているのか?」
眼鏡の奥の涼やかな瞳がすっと細まる。
最初のコメントを投稿しよう!