第一章 ソウルトランサー

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「すまん。ちょっと遅れちまった」  五分後、目的の大通り公園に辿り着いた俺は、見知った顔に向けて声をかけた。  直径五十メートルほどの円形の閑静な公園には、既に二人の特対の仲間が到着していた。通信用のヘッドセットを装着した二人の影が、荒れ放題の芝生に長く伸びている。 「……誰だ?」  公園の中央で、腕組みしながら立つ男が怪訝な顔で答えた。軽くウェーブした茶髪に銀縁眼鏡。薄く色の入ったレンズが西日を受けてちかと瞬く。  男の名は、エメロ・ジャスティン。 「おいおい。エメロ、俺だ……って、そうか。今は違うんだった」  そうだった。取りあえず合流を優先して、この状況をどう説明するか考えていなかった。  何を言おうか思案していたら、 「あれ、背中にいるの先輩じゃないっスか!? 先輩ひどいっス! 私というものがありながら、そんな美人と密着するなんてっ!」  エメロの後ろに立っていた女が、頬を膨らませながら駆け寄ってきた。  癖の強い赤毛を強引にポニーテールにまとめたそばかす顔の女で、八重歯が印象的な特対の後輩。マツリ・ジャスティン。  こいつは俺を慕っているらしく、何かと理由をつけては寮の部屋に侵入してこようとする。しかも深夜限定で。勿論、撃退率は百パーセントだ。  ちなみにエメロと名字が一緒なのは、エメロの部下であると同時に妹でもあるからだ。 「待て、マツリ。ちょっと様子がおかしい」  エメロが部下で妹のマツリを制して、俺に視線を向けた。 「……お嬢さん。レドは電話で悪いニュースがあると言っていた。君が何か知っているのか?」  眼鏡の奥の涼やかな瞳がすっと細まる。
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