雛祀り

3/3
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
「あの男の子が呪詛を解いてくれたおかげでやっとあなた様の御姿が見られます。皆、妾達の姿を見ると逃げてしまいましたから。長い間どれほど恋しかったことか」 「あ奴が気丈で無欲な者で良かった。人とは本来強欲で怖がりなもの。我等を呪詛の材料にした女子のように」 「あの女子、呪詛は解かれた時に己に返るものだというのに慢心してましたね。あと、こんな方法を教えた女の心根が恐ろしい」  天袋の隅に置かれていた一対の小さな雛人形は朝日を浴びると静かに消えていき、二本の白い紐だけが残された。 (終)
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!