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ほのかに漂う味噌汁の香りに誘われて、高瀬湊は目を覚ます。
窓からは、初夏の日射しがカーテンを透かして部屋に満ちていた。
外では、耳障りなくらい蝉が鳴いている。
今日も暑くなりそうだ。
ぐっと伸びをして、ベットから降りると湊は洗面所へ向かった。
顔を洗い、歯を磨き、身支度を整えるとリビングへ向かう。
すると、ピンクのハートフリルエプロンをつけた伊織が、キッチンから顔を覗かせた。
『おはよ、湊』
「ああ、おはよ」
『朝食できてるよ』
食卓の上には、卵焼きに焼いた塩鮭、きゅうりの漬物と豆腐とワカメの味噌汁、それにつやつやの白いご飯が並んでいる。
伊織が早朝から起きて、用意してくれた朝ごはんだ。
食卓につくと湊は箸を取り、卵焼きに箸を伸ばした。
あむっ、と一口食べて幸せそうに顔を綻ばせている。
「うん、最高!伊織、料理の腕があがったな。同棲を始めた頃は……」
『その話は止めてよね』
社会人になり、伊織と湊は同棲を始めた。
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