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制服は長袖なのに外気は蒸し暑い初夏の午後。 学校を終えた私は、 今日もいつものようにお隣へ出かけた。 帰りがけにそのまま寄ってもいいけれど、 中学生だった時にそれを続けたらやんわり注意されたので、今はちゃんと一度帰って着替えている。 低い門扉を勝手に開けて中へ入る。 踏み入る先には見渡す限り木々が植えられて、 さながら森のようだ。 というか、森だ。 横宮さんの家はとにかく庭が広い。 世帯向けの和風な平屋をぐるりと包んで、 家そのものよりも広い。 家の建つ土地の関係上、 あとは私の部屋が二階にあるという関係上、 自宅からはこのお隣のほぼ全景が見下ろせるので間違いない。 庭も何もないこぢんまりした戸建て住まいにしてみると、この広さはちょっとうらやましかったりもする。 そこにこうして森よろしくのガーデニングが加われば、これはもう庭というより、 広大な別世界のようだ。 最初のうちは私も随分と面食らって遭難したけれど、毎日のように通えばさすがに慣れる。
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