前章

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居間は適度に片付けられていた。 それでもどこか雑然としているようには感じるけれど、動き回るのには困らない。 窓を開けるだけで、涼しい風が部屋中を駆ける。 そんな居間の窓側に置かれた座卓の前に、 私はお客さん顔をして座る。 すぐさま、横宮さんが二人分のお茶を運んできた。 小花を散らせた模様のティーカップ。 趣味は良いと思う。 「さてっ。お茶も準備できたし、食べようか」 ものすごく嬉しそうな顔の横宮さんが、 レジ袋の中身を紙袋ごと取り出す。 すでに温めてあったそれらを、 カップと一緒に持ってきていたお皿によそった。 毎度のことながら、すぐさま皿の上で湯気を立て始める、六本の焼き鳥たち。 横宮さんは実に楽しそうにそれらを眺めて、 「…あれ?」 その笑顔を曇らせた。
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