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抜けるような青空が、窓の外に広がっている。入道雲とのコントラストが眩しい。きっと外ではセミの声が鳴り響いているんだろう。ここではクーラーの静かなモーター音しかしない。
あたしは足を組んで、テーブルに頬をついて言った。
「ふっ……帰りたくない」
「いや帰れよ」
先生にスパコーンっと頭を叩かれた。
いったーい!!
夏休みである。
午前中の課外授業を終わらせて、入り浸るは資料館。だってー、この炎天下の中を汗水垂らして帰りたくないじゃん。資料館はクーラー効いているし。
木曜日の本日。ギャラリーでお弁当食べていると、先生がやって来た。なんでも毎週木曜日は先生も柳井堂はお休みらしく、午前中はゆっくりしてから資料館に来るとのことだ。言霊祓いは仕事じゃなくボランティアみたいなものだから、時間とかは決まっていないらしい。
少しでも長く一緒にいられたらなーと思わなくもないけど、夏休みな分、いつもよりは長い。へへ、嬉しいな。
「ねー先生ー、どっか連れていってよー」
「嫌だ。なんで小娘を遊びに連れていかないといけない。それに俺は仕事だ」
「えっ、夏休みないの?」
「あるわけない」
そっかー。社会人は大変だな。
でも遊べないのか。残念。
「まぁあたしたちも課外授業とか文化祭の準備とかで忙しいけどね」
夏休みが明けたらすぐに文化祭だ。どのクラスもその準備に追われていて、課外授業が終わってからも残っている生徒が多い。
「そっか。もうそんな時期か」
「そうだよー。先生もこの学校だったんだよね? なにやったの?」
「二年のときは、プラネタリウムをやったな」
「えっ、なにそれすごい!」
そんなことできるの? どうやったんだろう? 見てみたかったなー。
「お前らはなにをするんだ?」
「ステンドグラスもどきだよー。好きな本の一場面をこう、箱とフィルムで作って、中に電球を入れて影絵みたいなステンドグラスにするの」
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