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入口近くのレジの横で新聞を読み耽っていた店主が、顔をあげると「はい、いらっしゃい」とはにかみながら言った。年のほど五十歳前後と思われる男性店主は、ロマンスグレーの豊かな髪を自然に整えている。対してラフな服装をしているのだが、なかなか旨いコーヒーを淹れるのだ。味の違いがどうこう、ということはよくわからないけれど、とにかくおいしいのだ。
「お好きな席へどうぞ」
僕は自分が座るには低いカウンター席には座らず、店の奥のテーブル席を目指した。待ち合わせ相手はすでにやって来ていた。十二月の寒空であるにも関わらず、コーラをちびちびと飲みながらメニューを見ていた。彼はドアに背を向けていて、耳からは細いコードが伸びている。音楽を聴いているらしく、僕の来店には気づいていないようだ。
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