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熱せられたやかんが、怒っているように音を出す。
それに加え、蓋もカタカタと鳴る。
しかしその音すら聞こえない程に、俺は鼠の動きに集中していた。
全ての神経を研ぎ澄ます──。
────!!
一瞬の人の気配。人が動いたことで作り出される、僅かな風。
それを感じ取り、体ごと右側に捻る。
こう言う状況で、狙うは背後からが多い。
思惑通り、鼠も背後から襲って来た。
今まで俺がいた場所に、白い両腕が伸びてくる。
右手に何か、布のような物を握っているのが見えた。
それを視界の端に捉え、すかさず白い右腕を掴む。
相手に一瞬の猶予も与えない。掴むと流れるように、背負い投げを掛けた。
───ダーン!と、鼠の背中が床に叩き付けられる音がした。
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