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空が禍々しい。
季節はもう春の盛りだが、生ぬるい風が吹き抜ける灰色の空を、更に黒く塗り込めようとするかのように、大量の鴉が空にひしめいている。
その真下で、恨みを籠めた眼を見開いた武者の首が大量に乱雑な様子で並んでいた。
時は元弘3年(1333年)。場所は博多の探題館脇にある犬射馬場。
鎮西探題を攻め滅ぼそうとして返り討ちにあった、菊地武時とその郎党200あまりもの凄絶なるさらし首である。
そのさらし首を見物する人の中に、奇妙な二人連れが居た。
壮年の小柄な僧侶と、小坊主のなりをしたやけに体の大きい少年の二人だ。
まだ見習いなのか、剃髪も済んでいない。大きな体を丸めるようにうずくまり、生首を睨み付けるように眺めているその目元には幼さが残る。
「一心頂礼。万徳円満。釈迦如来」
呟くような僧侶の読経が響く。あたりの人影も手を合わせては離れていく。
「真身舎利。本地法身。法界塔婆」
見物人がまばらになるにつれ読経の声も心なしか大きくなっていく。
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