第1章

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 その指の先を辿ると、そこには、 「なんだよ……これ……」  血の付いた包丁が転がっていた。 「あなたが刺したんです」 「な、なに言ってるんですか! 知りませんよ……俺」  そう言いつつ自分の体を見ると、紺色のパーカーのところどころにシミができている。  これが血?  俺は訳が分からず髪をくしゃくしゃと触った。  そしてその手を止め、無表情で言った。 「俺は……誰だ……?」  呆然とする俺に男性は手を差し伸べる。 「ここじゃ誰かに見つかるかもしれない。とりあえず、私の家に来なさい」  自分が誰かも分からない俺に、それを断ることはできなかった。
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