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その指の先を辿ると、そこには、
「なんだよ……これ……」
血の付いた包丁が転がっていた。
「あなたが刺したんです」
「な、なに言ってるんですか! 知りませんよ……俺」
そう言いつつ自分の体を見ると、紺色のパーカーのところどころにシミができている。
これが血?
俺は訳が分からず髪をくしゃくしゃと触った。
そしてその手を止め、無表情で言った。
「俺は……誰だ……?」
呆然とする俺に男性は手を差し伸べる。
「ここじゃ誰かに見つかるかもしれない。とりあえず、私の家に来なさい」
自分が誰かも分からない俺に、それを断ることはできなかった。
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