11576人が本棚に入れています
本棚に追加
/309ページ
取り急ぎ、ねえ、あんな紳士な護衛ウチにいたっけ。
「さすが冴島の護衛ね。転びそうになったらすぐ手を差し伸べてくれるなんて──」
「護衛じゃねえよ」
「うん?」
ゴミクズのようにそう吐き捨てると、すぐさま綺良は当主の表情(かお)を纏う。そして立ちん坊になっていた護衛どもに苛々を撒き散らしたのだ。
「おい!!何をしている。ウチの護衛の目は節穴か、余所者を容易く澪に近づけるなとあれほど、」
「「も申し訳御座いません!!」」
嘘でしょう。余所者が、このワラワラ護衛軍のなか違和感なく入ってきたというの。
驚いている私の傍ら、あなたは護衛どもの顔すらまともに見ていないようだった。ただ顎を下げ、ギリギリと音が聞こえそうなほど拳を握り締めていた。
「……一番近くに居たのは俺だな。澪、悪かった」
ああは言っていても、護衛より誰より自分を責めているに違いなかった。あなたはそういうひとだ。
「ううん悪いも何も、何も無かっ、」
「石橋新(あらた)──あの石橋宗家の新当主が何の用だよ……」
「?いしば、」
「おまえは覚えなくていい、三歩歩いたら忘れてくれ」
「わ、わかった努力します」
石橋宗家、削除、石橋新、抹消……ふうん今のがあの石橋宗家の新当主石橋新ねーえ。
最初のコメントを投稿しよう!