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て、イシバシソウケってどこぞ?!
なんてエア頬杖をついているうちにも綺良は出口へと歩き出すわけだが、その背中がやけに冷静で淡々としてて面白くない。
〝護る〟〝護れなかった〟とか、そんなことの前にあるべきはずのものがない気がして面白くない。
慣れないヒールを鳴らし小走りで駆け寄り、多方面から顔を覗き込む。
「あ、綺良?一応言っておくけど今のひと私のタイプじゃないよ?これっぽっちも!」
「ああアイツもカイワレでないもんな」
なんて素っ気ない声を出しつつ悠々と歩みを進めている。
なぁんだツマラナイ。まぁ美しいと当然のことを言われたまで。口説かれたわけではなし、唇にキスされたわけでもなし、これ位では妬かないか。
それでなくとも私たち結婚五年目。嫉妬だの束縛だのに拘る時期はとっくに過ぎちゃったんだろうな。
「……ああおまえはな……」
「うん?」
それはそれでなんだか……、と思っていればなんてことはない。迎車の前までくると首根っこを掴まれ、車内へと勢い良く放り投げられる。
「──?!ちょっと!痛いよ綺良っなにごとっ?」
「何時何時も忘れてくれるなよ、澪。おまえは俺の花嫁だ」
「う、うん!そうだね!間違いない!!」
わたくし、綺良というオトコを侮っておりました。
気づけば車の後部座席に押し倒されており、いよいよ私存亡の危機を覚えるのだった。
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